吉田松陰書簡
月性宛
安政 五年一月十一日
読み方
今早清水出足也 十一日追啓 寅
昨夜、中谷正亮事清水（（図書））氏へ罷り越し、幕府いよいよ墨夷に臣たらば二国丈け不同意然るべくと申す事、井蛙の見を捨て飛耳長目を務むべしと申す事論じ候所、清水氏も大いに喜び、決心の色眉睫に見れ候由、今早正亮来話仕り候、只だ弾正（（益田））大夫已下の議論気遣敷く候故、昨夜道太（（中村道太郎））・松如（（土屋矢之助））へ簡し候に、松如来り徹宵談じ申し候、二人にて政府へ説し一定の議論を早速清水迄申し遣し御座候、何分此間上人なかるべからず、秋良なかるべからず、只だり御出錫を相待ち候のみ、其の内四人（（方））の新聞在らせられ候はゞ御報知待ち奉り候、僕も清水へ一書を與へ候、蘭書墨使を以て張儀・新衍垣（（新垣衍））に比し、清水に攻むるに屈平・魯連を以てし候、餘り妄論に候や御序に御教示下さるべく候
原文
今早清水出足也 十一日追啓 寅
昨夜中谷正亮事清水（（図書））氏へ罷越幕府弥異墨夷ニ臣たらは二国丈ケ不同意可然と申事、井蛙ノ見ヲ捨テ飛耳長目ヲ務ムヘシと申事論候所、清水氏も大ニ喜、決心之色眉睫ニ見レ候由今早正亮来話仕候、只弾正（（益田））大夫已下之議論気遣敷候故、昨夜道太（（中村道太郎））・松如（（土屋矢之助））へ簡候に、松如来り徹宵談申候、二人ニて政府へ説シ一定之議論ヲ早速清水迄申遣候筈ニ御座候、何分此間不可無上人不可無秋良只御出錫ヲ相待候のミ、其内四人之新聞被為在候ハヽ御報知奉待候、僕も清水へ與一書候蘭書墨使ヲ以テ張儀・新衍垣ニ比し清水ニ攻ムルニ屈平・魯連ヲ以テシ候、餘り妄論候哉御序ニ御教示可被下候
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